生きている乳酸菌と死菌

乳酸菌は生きて腸まで届くことが大切といわれてきましたが、実は最近の研究では死んだ乳酸菌である死菌も人の体にとって有益であるということがわかってきました。
乳酸菌は生菌(生きている菌)でも死菌でも摂取することで、働きは少し異なりますが整腸作用や免疫力の向上に役立ちます。
さらに、死菌ならではのメリットもあります。
それでは、乳酸菌の生菌や死菌にはどのような働きがあるのか、その違いや死菌の有用性についてお伝えします。

生菌の働き

生きて腸まで届いた乳酸菌の生菌は、腸内で乳酸を産生します。
それによって腸内を酸性に保ち、悪玉菌を抑制するとともに元々腸内に棲みついているビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きがあります。
外から摂取した生菌は腸に定着しないといわれていますが、排泄されるまでの4〜5日は他の善玉菌と同様の働きをしてくれます。
また、腸壁を刺激して蠕動運動を活発にしたり、マクロファージや好中球などの免疫細胞を刺激、強化することで免疫力を向上させる働きもあります。

死菌の働きとメリット

乳酸菌の死菌の働きで注目すべき点はその菌体成分にあります。
菌体成分とは、乳酸菌を構成している細胞膜や細胞質、核と呼ばれる部分で、主にタンパク質からなります。
死菌の働きとは、この菌体成分の働きのことで、腸に棲みついている善玉菌のエサになります。
また、悪玉菌や悪玉菌が産生した有害物質を吸着して排泄する働きもあります。
死菌もその菌体成分によって小腸内にある免疫に関わる受容体(レセプター)を刺激することで、免疫力を向上します。

このように生菌と死菌では働きが少し違いますが、どちらも腸内環境を整えたり、免疫力を向上することで人の健康に役立つことができます。
そして、さらに死菌には死菌ならではのメリットもあります。

まず、死菌は生菌よりも体積が小さく、一度に大量摂取ができます。
これによって、善玉菌にエサを豊富に与えられること、レセプターへの刺激が増えることでより効果を感じることができます。

さらに、加工保持がしやすく、品質が一定になり、製品化しやすい。
様々な一般食品への応用が可能で、熱や酸に気をつかわずに気軽に摂取できます。
研究によっては、生菌よりも死菌の方が効果があるとされている場合もあります。

死菌でも効果があるという実験結果

腸内細菌学の第一人者である東京大学名誉教授光岡知足氏は、生菌よりも菌体成分や発酵生成物(乳酸菌が発酵する過程で生成される物質)が重要だと考え、死菌の効果を明確にする実験をされています。

マウスを使った実験では、90匹のマウスに「普通のエサ」「普通のエサに牛乳を14%添加」「普通のエサに殺菌酸乳を14%添加」をその一生にわたって与え、寿命を調べました。
  • 「普通のエサ」では平均寿命84.9週
  • 「普通のエサに牛乳を14%添加」では平均寿命84.4週
  • 「普通のエサに殺菌酸乳を14%添加」では91.8週
という結果になり、殺菌酸乳を与えたマウスの平均寿命は約7週間(8%)伸びることがわかりました。

こちらは人による試験で、11名に加熱殺菌乳酸菌顆粒を600mg/日を2カ月間摂取させたところ、そのうち9名の排便状態が改善されました。

こちらも人による試験で、8名に殺菌乳酸菌を200mg/日を2週間摂取させたところ、腸内のビフィズス菌の有意な増加と悪玉菌の減少が確認されました。
このように、死菌でもその効果が確認されており、その有用性には大きな期待が持てます。

死菌での働きが優位な「新型乳酸菌」のフェカリス菌

乳酸菌であるフェカリス菌はもともと500nm(ナノメートル)ほどと他の乳酸菌に比べて大きさが小さいため、多く摂取することができます。
さらに、加熱殺菌した死菌の状態で摂取した方が効果が高いという研究成果が発表されている乳酸菌でもあります。
そのため、フェカリス菌は新型乳酸菌とも呼ばれています。

乳酸菌の整腸効果は生菌でも死菌でも効果があることがわかりました。
そして、死菌の方がより多くの菌数を摂取できることや、取り入れやすいことなどから、生きたまま腸に届くことを気にすることなく、乳酸菌を摂取できることもわかりました。
しかし、もともと腸内に善玉菌が少ない人にとっては、善玉菌のエサとなる死菌を大量に摂取しても効果が半減する可能性はあります。
小腸内の受容体(レセプター)を刺激するという意味では、死菌は免疫力向上の効果が高いといえます。